こんにちは!人生の旅人です。
私は、30代中盤で妻・子供もいる中で、地方の大企業→東京のスタートアップ→地方のスタートアップへの転職を経験。本業では、新卒から一貫して人事をしています。
前回の転職記では、嫁ブロック、会社からの退職ブロックのリアルをお話しました。(前回の記事はこちら)
今回のテーマは、「違うカルチャーに喜びを感じるも、フルリモート勤務に適応できずにうつ状態に」なってしまった私の体験談です。
転職して、全く違う環境で働くのは不安…。世の中には転職してハッピーエンドの話は溢れているけど、失敗も含むリアルな話が聞きたい…。
今回は、私が違うカルチャーに喜びを感じた一方で、結局はうつ状態になってしまった体験談を赤裸々にお話します。
転職してしばらくは喜びの毎日
転職活動や家族への伝達で難しさはありつつも、幸いにも大企業からスタートアップへの転職が叶い、特に最初は意気揚々と働いていました。
一人の人間としての「幸せ」を考えてくれる
今どきの、特にIT系のスタートアップで主流の考え方だと思いますが、私が転職したIT企業は、「自由と責任」を基本的な考え方とした性善説の人事、カルチャーでした。
従業員が会社と約束したパフォーマンスを発揮し、成果を出して責任を果たす一方で、自らの個性を活かし最大限パフォーマンスを発揮するために、働き方、働く場所など自由を享受することができる。
一方、大企業は、一律のルールで従業員を縛る人事になりがち。
個性をある程度潰してでも、効率性を上げていけば成長していける時代には合っていたやり方だと思いますが、僕が転職したIT企業はこれとは真逆の人事のやり方でした。
特に印象に残ったのは、採用面接や入社後の1on1において、繰り返し「その決断、その仕事があなたの幸せに繋がりますか?」という質問をされました。
大企業では、「あなたの幸せ」なんて言う言葉は聞いたことがありませんでした。
「これこそが、自分がやりたい人事だ」、心からそう思いました。
裁量が格段に向上
以前私が記載した通り、大企業では組織の構造として自分自身で裁量を持つことが難しい。
人によってどれくらいの裁量があるといいのかは異なるので、一概には言えませんが、私自身は裁量があればあるほど、モチベーションが上がるタイプです。
大企業での裁量を数値で表して仮に3とすると、スタートアップでの裁量は間違いなく7〜8です。
感覚の話になりますが、スタートアップでの業務範囲や自分自身で決断すること、判断することに関しては、大企業の「部長一歩手前(課長、や企業によって呼び方は違うと思いますが室長)クラス」だと思っています。
専門性が身につく
大企業だと、業務・組織が細分化され、さらに一つの業務もチームで分担して行うことが多いので、実際の実務は後輩や一般職の方がやってくれたり、外注したりすることもあると思います。
一方で、スタートアップでは、担当者として入社する場合は、そもそも一般職がいないケースが大半なので、「すべて自分でやること」が求められます。
また、スタートアップでなにか新しいことをやろうとした際には、社内に知見が無いことが多い。(大企業だと、結構その道のスペシャリストがいたりして、その人に「社内のやり方」で指示を受ける、アドバイスを受けることが多かったです。)
そうなると自分で一から調べて、事例やフレームワークを学び、活用する形になりますが、スタートアップでは、世間で通用するフレームワークが、社内を説得する際に重要になります。また、0→1で企画し、実行・実務まで責任を持ちます。
もちろん大企業にいた身からすると、「ここ(実務の細かい部分)まで自分がやらないといけないのか」と思うことがあると思いますが、世間一般で言う(もちろん大企業でも通用する)専門性は身に付きやすいと実感しています。
喜びから、苦しみへ
転職してすぐは、自分が望んでいたことがすべて実現できたことで、本当に喜びを感じていました。
しかし、転職後数ヶ月で、喜びは苦しみへと変わり、自分にとっては挫折の日々となりました。
あまりに違うカルチャー/考え方/制度なので、改善点が見つけられない
大企業での自分自身の仕事の仕方は、いわゆる「問題解決」でした。
しかし、スタートアップに転職してみると私の視点からすると、素晴らしい考え方のもと、素晴らしいカルチャーを醸成し、素晴らしい人事制度を作って運用しているように見えたため、「こんないい人事をどう改善しろっていうんだ…?」という状態に陥ってしまっていました。
自分が何に貢献できるのかが、全く見えて来なかったのです。
もちろん、私もその状態のまま何もしなかったわけではなく、自分にできることは精一杯やっていましたが、どうしても小さな業務改善にしかならず、私の等級に求められていた期待を満たすことは全くできていないことは自分でも実感していました。
転職により給料も下がっていたので、家族への申し訳無さから焦り、自分を責めてしまった
さらに、転職により給料が下がっていたことで、「家族のためにも、早く給料をもとに戻さなくては」と焦ってしまったことが、さらなる悪循環を生み出します。
この焦りにより、何もできていない(実際はそんなことなかったのですが)ことで、自己肯定感がどんどん下がり、さらには「なんで自分は何もできていないんだ…」と自分自身を責めてしまったのです。
これにより、業務でもどんどんチャレンジができなくなっていき、上司からの評価も上がらない形となってしまいました。
こういった状況で辛い状況でも、大企業を辞めてスタートアップに転職した手前、妻にも本音を話すことが申し訳なく、話せず、一人抱え込むこととなっていきました。
フルリモート勤務の難しさ
そして、一番仕事がうまくいかない原因となってしまったのがフルリモート勤務です。
新幹線に乗って東京のオフィスに出社するのは2〜3ヵ月に1回程度。
引っ越しをせずに転職し、家族と過ごす時間も十分に確保できる。自分と家族のために、最も良い選択をした――入社当時は、そう思っていました。
しかし、フルリモートでの働く期間が長くなればなるほど、難しさを実感しました。
入社前の面接で、面接官の方から「フルリモートは難しいので本当に覚悟した方がいい」と言われていましたが、大企業でコロナ禍を乗り切っていたので、正直たかをくくっていました。
大企業では、長く働いて多くの人はそもそも対面で話をしたことがありました。つまり、オンラインでのコミュニケーションの前に、ある程度人間関係ができていました。また、年齢が違っても、新卒から同じような研修を受け、同じように職場で育てられているため、多くの人が似た思考を持ち、暗黙知を持っています。
そういった前提があってのオンラインでのコミュニケーションと、全く異なるバックグラウンドを持つ社員ばかりのスタートアップでのオンラインでのコミュニケーションの難しさは桁外れに違いました。
私が感じたフルリモートの難しさは、まとめると大きく3点あります。
- オフィス出社している同僚とどうしても情報格差が生じる
- 人事には必要な「社員が本当はどう思っているか」が感じづらい
- 家から出ることが圧倒的に減り、頭と心のオンオフの切り替えができない
1つ目は、覚悟していたことではありましたし、おそらく他の大企業と比べれば遥かにチャットツールでのコミュニケーション・情報共有が徹底されており、恵まれた環境だったと思います。
そういった中でも、「え、そんなこと聞いてない…」「早く言ってほしかった、それ…」ということがあり、苦しみました。
2つ目は、オンラインでも人事として必要な情報が取得できている人もいるので、自分自身の特性によるところが大きいと思います。特に難しかったのは、従業員の意見を聞くときです。
私自身は、相手の何気ない表情だったり、雰囲気、打ち合わせ前後の雑談、立ち話などで、相手の本音をつかんでいることがよくわかりました。いくらコロナ禍を通じて、オンライン会議ツールが発達したといえど、そういったものを感じるのは私にとっては無理でした。
3つ目も自分の特性によるところが大きいと思いますが(とはいえ、同じことを言っている人も沢山しっていますが)、毎日自宅の机でPCに向き合い、オンラインで人と話し、身体的に動くということが全く無いという状況はかなり辛かったです。
もちろん、朝夜に散歩してみたり、ジムに行く回数を増やしたりと工夫してみましたが、辛いことはあまり変わりませんでした。
慢性的な頭痛からうつ状態へ
こういった苦しみにより、転職してから8カ月くらいで、慢性的な頭痛を発症しました。それまでの人生で基本的には健康だった自分からすると、「ずっと頭が痛い」と言う状態はかなり辛かったです。
それでも頭痛薬を飲みながら、様々なリフレッシュの方法を試していたものの、自分の心が折れるタイミングがありました。
ある仕事をアサインされ、やり始めていた中で、ある日、「この仕事は私にはできない…」と思ってしまい、仕事に対する意欲が全く湧かなくなってしまったのです。直感的に、「会社を休むしかない」と思いました。転職してから10カ月目の出来事でした。
その日のうちに上司に仕事を別の人にお願いしたい旨を伝え、そして、2週間会社を休ませてほしいことを伝えました。
そして、休みに入ってすぐに病院に行き、うつ状態と診断されました。
1カ月の休職・治療で復職
自分なりにうつについて調べ、(詳細は割愛しますが)投薬ではなくTMS治療を選択しました(保険外の治療となるため費用がかさみましたが…)。
結果的には、1カ月ほど治療を続けたところ、効果があった気がしており、少しずつ前向きに考えられる状態になっていきました。
もう少し休むと言う選択肢もありましたが、人事という立場上、うつによる休みはどうしても長くなりがちなことを認識していたので、「自分らしくないな」と思い、ちょっと無理矢理感はありましたが、1カ月の休職後、復職しました。もちろん、本調子からは程遠い状態でした。
この時の気持ちは、「あと3カ月間頑張ってダメだったら、退職する」。そう腹を決め、家族にも伝えていました。
降格、そして退職へ
結論から言えば、色々と工夫をしてみたものの、一度始まった負の連鎖は、食い止められませんでした。
最低限の仕事をこなすだけで精いっぱい。実務は確実に回しましたが、会社から期待され、また自分自身も期待していた「活躍」には遠く及びませんでした。
こういった状況で、人生で初めて経験したのが、「降格」です。
復職して数週間働いた後、等級確認のタイミングで、上司から「今のままだと、降格せざるを得ないけど」と、オンラインの面談で言われました。
続けて、「それで負の連鎖が続くのも避けたいよね。等級を維持して、チャレンジングな仕事を頑張るか?」と。
考えるまでもなく、パフォーマンスを上げることは難しいと感じていたため、「降格させてください」と答えました。
そして、この降格をきっかけに、3カ月働いてみても自分のパフォーマンスが変わらない可能性が高いことを感じ、退職する決断をして、転職活動を開始しました。
まとめ
自分自身の反省として、長く働いた大企業とは全く違う業種、会社のカルチャー、加えて、自分自身が誇れる専門性があるわけでもない中でフルリモート勤務というは、背伸びをしすぎたことは明白でした。
私の場合は、転職する前にもっと自分の特性を理解し(自己理解)、自分の能力の発動条件を満たす会社、ポジションに転職すべきだったと反省しました。これは3社目への転職の際に、大きな学びとなります。
次回は、今回の挫折後に、2回目の転職を経て、3社目で「スタートアップでの活躍」を果たすまでのストーリーをお話しします。
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